Photo/ Vanity Fair
エリザベス・ホームズが、セラノス社(Theranos)の成功により、史上最年少のセルフメイドビリオネアとしてForbsに取り上げられたのが2014年。
19歳でスタンフォード大を中退し、指先から摂取したごく少量の血液から200種類以上の検査を、既存の検査機関よりも早く安価で、かつより正確に行うことのできる医療テクノロジーを発明した才女として、数々のメディアに取り上げられていました。
私も当時、彼女のことを日本のウェブメディアに執筆させてもらったのでよく覚えています。
セラノスとエリザベス・ホームズの繁栄と衰退
そんなエリザベス・ホームズとセラノス社の大スキャンダルがWSJにスクープされたのが2015年。同社のテクノロジーには大きな欠陥があり、まともに検査できる状態からはほど遠く、同社が行う大部分の血液検査は他社の既存機器を用いて行われている。自社のテクノロジーで行われていた極わずかの検査も、エラーを無視し、信ぴょう性の低い結果と知りながら患者に通知するといった事実上の詐欺を行っている。
という内容が元従業員らの証言らと共に詳細に記された記事は世界中を震撼させました。
私もこの記事を読んだ時のことはよく覚えていて、その頃彼女がありとあらゆる媒体に登場し、時世代のスティーブ・ジョブスともてはやされていただけに、衝撃が大きかったです。
セラノスのスキャンダルの裏側を描いたBad Blood
そんなスクープ記事を書いたWSJの記者ジョン・カレイロウが今年の5月に出版した『Bad Blood』を読んだのですが、これが思いの外おもしろくて2日間で読んで(というよりオーディオブックで聴いて)しまいました。
元国務長官のジョージ・シュルツ、元国務長官のヘンリー・キッシンジャー、元国防長官のウィリアム・J・ペリーといった重鎮を顧問におき、クリントン元大統領夫妻やオバマ政権とも関係が深かったエリザベスとセラノスには、シリコン・バレーの著名なベンチャー・キャピタリストから、ウォルマートの創業者一族、さらにはメディア王のルパート・マードックまでが投資していました。
これだけのメンバーが集まりながら、彼らの多くは、エリザベスと、自ら開発したテクノロジーで『世界を変える』という彼女の信念に惚れ込み、10年にも渡り、支援し続けたというのも不思議でしたが、本の中で興味深いラインがありました。
彼らの中にも、エリザベスの執拗なまでの秘密主義や、そのテクノロジーを裏付けるデータの不足、一貫性のなさ、度重なる遅延などから、疑問を持つ人も少なくなかったそうですが、それを無理やり打ち消して目をつぶり続けた理由...
それはFOMOだと言います。
Fear of missing out - この賭けからおりて、もしもセラノスのテクノロジーが本物だったら..
本物であれば、数年後にはFacebookのように、いや、それ以上の存在になるのは間違いないのに、自分だけが取り残されるわけにいかない、そうなったら一生後悔する...という気持ちから、疑いや不安を無視して待ち続けたということ。
その一方で、利権の絡まない従業員や外部のコンサルティング会社などは、同社のテクノロジーが本物でないと言い続けていましたが、役員らやセラノスと契約を交わしていた米大手薬局チェーンのウォルグリーンの幹部らは聞き耳を持ちませんでした。
強い邪念があるとき、感覚が鈍り、正確な判定を下せなくなるということを改めて痛感します。
もう一つ分からないのが、なぜこれほど若く野心家のエリザベスが『サニー』と呼ばれる20歳以上も年上のサニー・バルワニと私生活でもビジネスでもパートナー関係を続け、影響を受け続けたのかという点。
ロータスとマイクロソフトで働き、自らもスターチアップを売却して成功していたというこのサニーは、元従業員らも皆口を揃えて、威圧的で無知で無慈悲な人物だと言っていましたが、写真を見ても
同書によると、サニーがセラノスに加わる前から、エリザベスは世間を欺き、従業員らをコントロールし、その技術や姿勢に疑問を持つ社員を恐喝していたということで、彼の影響で動いていたわけではないようですが、彼女はまだ若く未熟で経験も乏しいだけに、影響力を持つ相手次第で大きく変わっていたはず。
Facebookのマーク・ザッカーバーグのようにコンピューターサイエンスやコーディングならまだしも、 生化学や医療の新技術の達成は何年・何十年もの研究なしではなし得ない...というのは素人でも分かりそうなことですが、彼女の何倍もの年齢で輝かしい功績と経験を持つ周囲の面子を信じ込ませていた彼女のカリスマ性とパフォーマンスはすごいと思いますが...
あれだけ平気で人と世間を欺けるのはソシオパスだからに違いない...という声も聞かれますが、その真意はおいておいて、もう印象的だったラインをご紹介しますね。
アメリカではFake it till you make it という格言があり、実際、スタートアップの成功のエピソードを聞いていても、形になる前からなっているように振舞っているうちに、現実が追いついてきた...といった例は珍しくありません。
エリザベスも、信念と理想が最初にあり、現実が全く伴わないままに、その完成と成功を思い描き前進し続ければ、必ず現実になる...という思いで10年間嘘に嘘を重ねていました。
セラノスの場合は医療技術という人の命を左右するサービスなわけですから、Fake it till you make itでは済まされないのは言うまでもありませんが、シリコンバレーを中心として、アメリカではアグレシッブな姿勢を美徳とするカルチャーが背景にあることは否定できません。
結果を出すためにはどんなことでもする...という強い信念を持つことは大事なことは言うまでもありませんが、それがなんのためなのか?誰の役に立つのか?という基本を忘ると単なる競争やエゴになってしまうんですね。
2018年に入って、エリザベスには今後10年は上場企業のディレクターや役員になることを禁じる命令が下りましたが、また新しい事業に向けて資金集めを始めたという報道も聞かれます。
まだ30代半ばの彼女、これからどのような人生を歩んでいくのか気になるところです。
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